様々な自動化や効率化が実現され、AIによる高度な処理も可能になってきた現代では、コンピューターにより人間の能力の代替をすることも珍しくありません。
その中でも、画像認識技術は近年著しく成長を遂げている分野のひとつです。
画像認識では、静止画やカメラで撮影した画像や映像などをコンピューターが認識し、判断や処理を行えます。
この記事では、画像認識の需要が高まる背景や、実際に活用されている事例を紹介します。
画像認識の重要性が増加している背景
画像認識自体は、近年新しく登場した技術ではなく、文字認識などこれまでも活用されてきました。
近年は、活用シーンの広がりと共に画像認識を活用する重要性が増加しています。
セキュリティ
画像認識技術はセキュリティ分野で大きな変化をもたらしています。
特に顔認識技術は、空港のセキュリティチェック、銀行のATM、スマートフォンのロック解除など、多岐にわたる分野で採用されているため、利用したことがある方も多いでしょう。
これらのシステムは、個人の特徴を精密に識別することで、従来の暗証番号や物理的なキーと比較して高いセキュリティを実現しやすいといえます。
品質管理
製造業界では、画像認識技術による品質管理が製品の精度向上に大きく貢献しています。
製品の表面検査、部品の欠陥検出、組み立てラインでの誤差チェックなど、多様なプロセスで利用することが可能です。
これにより、製品の不良率の低減、生産効率の向上、コスト削減を期待できます。
特に、自動車業界や電子機器の製造では、微細な欠陥も検出できる高度な画像認識システムが重要な役割を果たしています。
▶️ 参考記事「画像認識技術によるDX化とは?工場の進化を考える」
警備や監視
警備や監視分野でも、画像認識技術が重要なツールのひとつとして活躍しています。
監視カメラの映像をリアルタイムで分析し、不審な行動や事件の兆候を即座に検出する、といった活用が一般的です。
▶️参考記事「防犯カメラによる顔認証とは?メリットや活用シーンについて詳しく解説」
▶️参考記事「顔認証システムで不審者登録を行なうメリットとは?」
画像認識の精度が実用レベルまで上がっていることで、従来は人間の目で対応していた様々なシーンでの活用が広がっています。
セキュリティの分野では、パスワードやICカードといった認証方式が置き換わるほどの注目を集めています。
画像認識の活用事例5選
画像認識が実際にどのように活用されているのか、事例を紹介します。
ベーカリー店での商品識別
ベーカリー店では、パンそれぞれの単価を従業員がレジに打ち込み、会計を行なう流れが多くあります。
しかし、これには従業員の習熟が必要である点や、打ち間違い、単価間違いが起こるリスクも考えられるでしょう。
近年では、お客様が選んだパンをカメラで撮影し、画像認識技術によりパンを識別、金額を表示する、ということが実現されています。
従業員の負担が削減され、会計に要する時間短縮にも繋がっています。
大手ECサイトでの画像検索
膨大な商品を販売しているECサイトでは、欲しい商品のイメージ画像を用いて検索することで、それに似た商品を表示する機能を導入しています。
衣服などのアパレル商品は具体的な商品名ではなく、好みの色や形といったイメージで購入するものを探す利用者も多くいます。
そのため、単純な文字検索ではなく画像を用いることで、より自分の好みにマッチした商品を見つけやすくなっています。
文字を識別してデジタル化や翻訳を実現
書籍やメモなど、私たちは日常的に膨大な文字を扱っています。
画像認識技術が文字を高精度で識別できるようになったことで、手書きのメモをテキスト化してデータとして扱うことや、カメラで映した外国語をその場で翻訳する仕組みが実現されています。
翻訳については以前から高精度なサービスが存在していましたが、翻訳するためにはその外国語を入力する必要がありました。
画像認識によりその手間が削減され、より利便性が増しているといえるでしょう。
また、メモに関してもPCやスマホではなく、手書きを好む方も多くいます。
メモを取ることは手書きのままで、後から検索やファイル管理ができるデジタル化も可能となることで、利便性の向上に繋がっています。
顔認証による受付
薄板鋼板の加工および販売に携わる根津鋼材株式会社では、一日に数十台のトラックが出入りし、ドライバーとの荷物引き取り手続きが行なわれていました。
受付業務を従業員が担当していましたがその負荷は大きく、顔認証による受付システムを導入しています。
ドライバーの顔情報を登録し、車両情報や伝票の発行を一括で管理しています。
従業員の負担はもちろん、ドライバーの方々も手続きに要する時間を削減できており、win-winな環境を築いています。
▶️参考記事【導入事例】根津鋼材株式会社「顔認証で無人受付が実現。約8割ほどの業務削減に直結」
顔認証決済による不正転売防止
イベントやコンサートのチケットはインターネットで手軽に購入でき、人気のチケットでは販売直後に売り切れてしまうケースや、特定の条件を満たしていなければ購入できないといった状況は多くあります。
チケット購入後の転売を禁止しているイベント主催者は多くいますが、それでもチケットの転売が横行してしまうことが課題として存在していました。
顔認証決済により、チケット購入時に購入者の顔情報を登録し、イベント会場への入場時にチケットと顔情報を照会することで転売を防ぐ試みが行なわれています。
これにより単純な転売を行なうことは困難になり、健全なイベント開催に顔認証が貢献しているといえるでしょう。
▶️参考記事「顔認証決済とは?仕組みやメリット、課題、事例について詳しく解説」
画像をコンピューターが認識する、という一見シンプルな画像認識技術ですが、活用の幅は極めて広いといえます。
これからの画像認識はどのような進化が期待されるのか
前述したように、画像認識技術は既に多くのシーンで活用されています。
今後はどのような進化が考えられるのでしょうか。
認識速度と精度の向上
アルゴリズムの改善やハードウェアの性能向上、カメラの高画質化などにより、高精度かつ高速な画像認識が実現していくと考えられるでしょう。
人間の目では判別が難しい微細なものを見つけ出せれば、医療分野や製品の品質管理など様々な分野で活躍が期待できます。
▶️ 参考記事「画像認識に使用されている「アルゴリズム」とは?機械学習やディープラーニングについても紹介」
▶️ 参考記事「ディープラーニングによる画像認識とは?仕組みや活用シーンを解説!」
方位や位置情報との組み合わせ
スマートフォンなどのカメラで景色を写し、その画像を分析することで、正確に対象物の大きさや距離を測定できるようになると考えられます。
これにより、ARやMRといった現実世界にデジタル情報を付加する技術の発展を期待できます。
これまでにはなかったエンターテイメントや、高度なナビゲーションが実現されるのではないでしょうか。
▶️ 参考記事「AR(拡張現実)とは? 4つの種類とVR・MRとの違いを解説」
人の目に代わる画像認識を有効活用し、ビジネスの進化を目指そう
目覚ましい進化を続ける画像認識技術は、既に特定の分野では人間の目をしのぐ精度で動作するケースもあります。
人間による確認は、目に見えたものの結果だけではなく、関連する問題点や改善点の発見ができる柔軟性があります。とはいえ、常に一定の精度で判断を続ける用途であれば画像認識によるメリットを享受しやすいといえるでしょう。