様々なサービスやシステムを連携し、効率的にビジネスを展開する現代において、アカウントの管理や認証作業は多くの業種で必要となる要素のひとつです。
正規の利用者が必要なリソースへアクセスするために欠かせない仕組みですが、認証方式や管理の方法によっては重大なセキュリティリスクが潜んでいる恐れもあります。
一度のセキュリティ事故が致命的なダメージとなりかねない現代のビジネス環境では、可能な限りセキュリティリスクを減らしながら業務効率化を目指すことが重要でしょう。
この記事では、一般的なパスワードとID管理に潜むリスクや、どのような観点で改善できるのかを解説します。
従来型のパスワード・ID管理を見直すべき理由
IDとパスワードでシステムへログインし、それぞれのアカウント情報を個別に管理する方法は直感的であり、ほとんどの方が戸惑うことなく対応できます。
しかし、現代のビジネス環境においてはID・パスワードによる認証手法やその管理が重大なセキュリティリスクとなってしまう恐れもあります。
パスワード忘れ
ユーザーがパスワードを忘れるトラブルは、特別な対策をしていなければ日常的に起こりうることです。
IT管理者によるパスワードリセット自体は大きな工数ではありませんが、数ステップの申請が必要なケースや、パスワード忘れが多発した場合には業務効率に悪影響を及ぼすでしょう。
ユーザーにとっても業務を行えない時間が発生してしまうほか、IT管理者の負担も無視できない要素ではないでしょうか。
強度の低いパスワード
複雑なパスワードを作成することはセキュリティ上極めて重要です。
しかし、セキュリティ意識の希薄さや、リテラシーが低い場合は覚えやすいパスワードを設定してしまいやすいでしょう。
個人のパスワード文字列は、管理者であっても確認できない環境が一般的です。
そのため、不適切なパスワードを使用していること自体に気づけず、重大なセキュリティ事故を招いてしまうリスクがあるでしょう。
▶️ 参考記事「パスワードの使い回しを防ぐ方法!原因と対策を明確にしよう」
管理の複雑さ
アカウントを持つユーザーは、それぞれに異なるパスワードを設定することが求められます。
しかし、そのルールを厳密に守るということは、それだけ管理するパスワードの数が増えてしまうということです。パスワード管理ツールなどの活用をしていなければ、パスワード忘れや強度の低いパスワードを設定する原因にもなります。
IT管理者側でも、システムへのログインに利用するIDやオフィスの入退室に利用するIDなど、様々な種類のIDを正確に管理する必要があり、大きな負担となってしまうケースがあるでしょう。
不正なアカウント利用
アカウントにはそれぞれ権限が設定されており、付与されるアカウントによってアクセスできるサービスやリソースが異なります。
本来は職務や役職に応じた権限が適切に設定され、各人物へアカウントが発行されるべきです。
しかし、煩雑な管理によりアカウント作成や権限設定が実情と合っていない場合やリテラシーの不足から、アカウントの貸し借りや共有が発生してしまうケースもあります。
サイバー攻撃
IDとパスワードによる認証は、「正しいパスワードを知っているのであれば、アクセス元は正しいユーザーである」という前提で成り立っています。
そのため、仮に第三者がたまたま正しいパスワードを入力した場合でも、リソースへのアクセスが成功するともいえるため、セキュリティとして十分とはいえません。
サイバー攻撃は日々進化しており、辞書攻撃やリスト型攻撃など、パスワード認証の突破を狙った手法も存在します。
パスワード認証の仕組み自体に起因するリスクも存在しているため、管理や運用の工夫だけでは対策にも限界が見えてしまいます。
どのような対処が考えられるのでしょうか。
パスワードの煩わしさを排除し、ID管理をシンプルにする生体認証
パスワードとID管理の負担が増加する原因のひとつに、IDごとに個別のパスワードを設定しなければならない点が挙げられます。
生体認証によりこの負担が大きく削減されることで、ID管理の品質向上を見込めます。
パスワード設定や入力が不要となる
生体認証では、指紋や顔などを認証装置で読み取ることで本人であることを確認します。
複雑なパスワードの設定やそれを覚えておく必要もないため、強固なセキュリティを負担なく実現することが可能です。
パスワード忘れや不正の防止
パスワード忘れや入力間違い、パスワード文字列の漏洩リスクも防げるため、IT管理者の負担も少なくなることで正確なID管理に注力することを期待できます。
生体認証によりパスワードとID管理の煩雑さを軽減しながら、セキュリティの向上も見込むことが可能です。
▶️ 参考記事「パスワードを安全に管理するためのセキュリティ対策とは?」
パスワード・ID管理を進化させる顔認証+シングルサインオン
業務形態や利用しているサービス数などにより、パスワードやID管理の最適解は異なります。
しかし、顔認証とシングルサインオンの組み合わせは非常に強力なアプローチのひとつとして挙げられます。
顔認証とシングルサインオンを組み合わせる理由
顔認証とシングルサインオン(SSO)の組み合わせには、多くの強みがあります。
顔認証では、パスワード文字列を使わないことによる認証強度の向上や忘れ・漏洩の防止を実現します。
それに加えて、シングルサインオンによる認証基盤自体のセキュリティ向上やログイン負担の削減を見込めます。
この2つを併用することで、アカウント管理の手間を削減しながらセキュリティの向上を実現することに繋がるでしょう。
顔認証+シングルサインオンによる効果
・従業員の負担軽減
シングルサインオン(SSO)により、一度の認証で複数のサービスにアクセスすることが可能となります。
一日に何度もサービスへログインするような業務では効果が顕著であり、ログイン作業に手間を掛けることなく本来の業務に注力できます。
・セキュリティ向上
シングルサインオンは上述のようにログイン作業を削減できますが、万が一不正アクセスが行なわれた場合は複数のサービスへ攻撃が行なわれるリスクもあります。
一方で、顔認証は生体認証の一形態であり、パスワードのように盗まれたり、忘れてしまったりするリスクが低い認証方式です。
シングルサインオンのセキュリティ的な課題を払拭し、高いセキュリティとシングルサインオンの効率を両立することが可能となります。
ほとんどの企業で顔認証とシングルサインオンを導入するには、外部サービスを活用することになるでしょう。導入による効果と必要なコストのバランスを見極めながら、慎重に導入計画を進めることが大切です。
▶️ 参考記事「シングルサインオン(SSO)とは?認証方式とその仕組み、安全性を高める方法を解説!」
パスワードとID管理の改善は根本原因への対処が重要
認証関連の仕組みを導入せずにサービスを活用するのであれば、多くのケースでパスワードとIDを利用した認証をすることになるでしょう。
しかし、サイバー攻撃のリスクが常に存在し、その手法も進化し続ける現代の環境においてパスワード認証を使うことは大きなリスクといえます。
文字列を入力して認証をする仕組み自体にリスクが内包されており、さらに管理の手間も掛かってしまうため、別の仕組みを導入することが直接的な解決に繋がるアプローチと考えられるのではないでしょうか。
顔認証とシングルサインオンは、その解決策として有効な手段のひとつです。
管理負担を削減しながらセキュリティを底上げし、サイバー攻撃のリスクを大きく削減することが可能です。