新型コロナウイルスが流行してからというもの、街中でよく見かけるようになったものが「画面に顔が映し出される検温器」ではないでしょうか。この検温器は「サーモグラフィー」と呼ばれる、放射温度計の一種を使用しています。
打刻時の健康確認や、その確認の時間短縮に、検温器の導入を検討している企業担当者の方もいるでしょう。この記事では、サーモグラフィーカメラの仕組みや特徴と、顔認証技術を組み合わせたサーモグラフィーカメラの導入事例を紹介します。
「サーモグラフィー」と「サーモグラフィーカメラ」とは
「サーモグラフィー」とは何のことでしょうか。まずは概要を詳しく見てみましょう。
サーモグラフィーとは
サーモグラフィーとは、サーモグラフィーカメラに写し出された画像や、その装置そのもののことです。
サーモグラフィーは熱量の分布を表示させた画像で、熱が高い部分は赤色、低い部分は青色で表示されます。そのサーモグラフィーを搭載し、物体から放出される遠赤外線の量を検知し熱の分布を画像表示したり可視化したりするカメラを「サーモグラフィーカメラ」と呼びます。
サーモグラフィーカメラ(サーマルカメラ)の仕組み
サーモグラフィーカメラは、遠赤外線を検出するセンサーが搭載されており、物体から放射される遠赤外線の量を検知し、カメラに映る映像全体の熱分布を表示する仕組みです。
サーモグラフィーカメラは非接触で温度を計測でき、温度を赤と青に色分けして表示することで温度分布を分かりやすくすることが可能です。温度が高い物体からは強い遠赤外線が放出され、温度が低い物体からの遠赤外線の放出は弱くなるため、その違いを検知し、温度を可視化できるのです。
サーモグラフィーカメラ(サーマルカメラ)の特長
サーモグラフィーカメラのカメラ・検温器としての特徴には、以下のようなものがあります。
リアルタイムで計測できる
サーモグラフィーカメラは、撮影されている人の温度変化をリアルタイムで測定できます。また、対象物が動いていても広範囲を撮影して温度測定が可能です。
光源がいらない
一般のカメラでは光がなければ映らないこともありますが、サーモグラフィーカメラは物体の発する遠赤外線を検知しているため光がなくても撮影でき、遠赤外線の強さを計測することができます。
体温測定のための人員がいらない
サーモグラフィーカメラは非接触でカメラ映像に映るだけで検温ができるため、体温測定のために人員を割く必要がありません。
サーモグラフィーカメラとスポット放射温度計の違い
近年よく使用されている非接触型検温器に、「スポット放射温度計」があります。ここでは、スポット放射温度計とは何か、サーモグラフィーカメラとスポット放射温度計の違いなどを解説します。
スポット放射温度計とは
スポット放射温度計は、非接触型のガンタイプ(ハンディタイプ)検温器です。サーモグラフィーカメラと類似した仕組みで、遠赤外線の量を検知していますが、検知範囲はピンポイントに限られるため、熱分布映像は表示できません。
スポット放射温度計で正確に温度を測定するためには、決められた測定範囲(スポット径)と測定距離で使用する必要があり、近距離(10cm程度)で測定することが一般的です。ガンタイプ(ハンディタイプ)検温器が代表的なデバイスですが、顔認証型(タブレット型)にもスポット放射温度計を使用したものが存在します。顔認証型の検温器の中で、指定された枠内に顔をはめて体温を計測したことがある方もいるのではないでしょうか。このようなタイプの検温器が、顔認証型のうちスポット放射温度計を使用している例です。
サーモグラフィーカメラは何が違う?
サーモグラフィーカメラとスポット放射温度計の違いは、測定する面積の違いです。スポット放射温度計が額(おでこ)に焦点を合わす必要があるのに対し、サーモグラフィーカメラは広い面積の遠赤外線量をリアルタイムで検知することができます。
動く物体の温度や、急激な温度変化を熱分布映像として可視化できることに加えて、遠距離からでも遠赤外線を検知することができるので、多数の人を効率よくスクリーニングする際に便利です。
サーモグラフィーカメラ × AI顔認証
サーモグラフィーとAI顔認証を組み合わせた場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
温度検知における「位置合わせ」の課題
スポット放射温度計では、「位置合わせ」の課題が残ります。距離と温度検知範囲が限られているため、額(おでこ)の温度検知の場合、デバイスに近づき、額(おでこ)の位置をスポット径に合わせる必要があるのです。
施設の入り口などで、なかなか検温できずにタブレットの周りに人が集まることがありますが、そのような場合はスポット放射型の顔認証で額に焦点を合わせなければならず、「位置合わせ」で時間が取られている状態です。入退室管理などにこのようなシステムを導入すると、行列ができて感染リスクが高まる恐れもあります。
「位置合わせ」の課題を解決するAI顔認証
スポット放射温度計に対し、サーモグラフィーカメラのAI顔認証では、カメラ映像に映っていれば、位置合わせの必要はありません。
仕組みは、映像内から人物を割り出し、人物から額(おでこ)の位置を特定し、その額(おでこ)の温度分布を検出しています。表面温度と環境温度から深部体温を推論するAIが備わっている機種もあります。
この一連のAIによる推論が瞬時に行われるため、「位置合わせ」の必要がなく、高速な温度検知が可能になります。高品質なAIやカメラが使用されている機種では、デバイスに近づくまでに温度検知が完了するので、行列ができず、密にならないため感染対策としても優れています。
勤怠管理に適した便利な機能
サーモグラフィーカメラの顔認証型(タブレット型)の機種では、インターネットに接続することで、管理画面が使用できる機種もあります。管理画面は、複数デバイスの一元管理やユーザーのグルーピング、認証・検知・アラート履歴の閲覧・保存などができ、Webブラウザからいつでもアクセスできるツールです。
もし、新型コロナウイルスの感染者が発生した場合、行動履歴や感染者に接触した可能性のある人の抽出に役立ちます。
またそれ以外にも、認証した時刻を、入退室の履歴や勤怠の打刻に反映することも可能です。
※顔認証機能が必要です。
勤怠管理、つまり労働の適正時間の管理と合わせて、労働する場所の安全性の確保もでき、従業員に安心感をもたらすと同時に健康管理をより強化できるシステムの構築が可能になるのです。
サーモグラフィーカメラの導入事例
それでは、サーモグラフィーカメラの導入事例はどのようなものがあるのでしょうか。ここではサーモグラフィーカメラの導入事例をいくつか紹介します。
イベント会場への入場管理
A社では、大型イベント開催に伴い新型コロナ対策として会場への入場管理にサーモグラフィーカメラを導入しました。同時に大勢を、距離を保ったまま検温できることが利点です。実際に発熱者も検知することができ、適切な対応に繋げています。
船舶・ボートへの搭載
サーモグラフィーカメラは船舶やボートへの搭載にも使用されています。暗闇であっても視界が明確なため、夜間の航行や船上の安全、警備などに使用されています。また、他にも海難事故の捜索や救助、海氷の検知、海上に流出した油の確認など、暗い場所での視界確認ができたり熱の検知に優れたりすることから、その使用用途は多岐に渡ります。
オフィスでの入退室・勤怠管理
B社では、これまでの指静脈認証システムを、JCVの温度検知と顔認証ができるシステムに移行しました。これにより、打刻時間の短縮、打刻のための長蛇の列の解消と、非接触で安全な打刻が実現したのです。スタッフ側としても、既存の勤怠管理システムとの連携や顔データの登録もスムーズで時間がかからず、大きな混乱もなく導入までのハードルも低い点がメリットでした。
スポーツクラブでの入室管理・感染症対策
スポーツクラブであるC社は、施設を利用する会員向けにJCVの温度検知と顔認証ができるシステムを導入しました。それにより、ドアの解錠・施錠、体温検知、チェックアウト・チェックインといった3つの作業を非接触・非対面で一元化することが可能になりました。会員証を忘れる心配もなく、会員から見ても発熱した人がいない状態でスポーツに専念できる環境が実現しています。
withコロナ時代に求められる顔認証×温度検知を1台で解決しよう
サーモグラフィーカメラは遠赤外線の強さを検出するため、光源が不要で非接触で測定できる点が特徴です。サーモグラフィーで色を表示することで視覚的に分かりやすい温度検知が可能となっています。また、AI顔認証を組み合わせたサーモグラフィーカメラは従来の「位置合わせ」の課題もクリアし、瞬時に測定でき便利です。
JCVでは、顔認証と温度検知が可能な「SenseThunder」を提供しています。業界最速の0.1秒検知が可能で、マスクありでも高精度で顔を検知します。また、勤怠システムとも連携可能で検知したデータは履歴にも残せます。もし新型コロナ禍でのイベントや勤怠管理にサーモグラフィーカメラと顔認証の導入を検討するのであれば、JCVのSenseThunderをご検討ください。
※本コラムで表記する検温・検温器とは「温度検知を行う行為・機器」を総称して使用しています。体温計とは薬機法に定められた基準で「体温を測定する機器」となります。