昨今、クレジットカード以外のキャッシュレス決済手段として定着しつつある「スマホ決済」。そのさらに先を行く「顔認証決済」の導入が海外で進んでいます。日本では導入例をほとんど聞かない顔認証決済ですが、一体どのようにして行うのでしょうか。本記事では、顔認証決済について、その仕組みやメリット、事例について詳しくご紹介します。
顔認証決済とは
顔認証決済とは、生体認証のひとつである「顔認証」を応用した決済システムのことです。利用者はあらかじめ顔データの登録を済ませ、その顔データとクレジットカードなどの決済手段を紐付けることで決済が可能となります。
日本ではまだ浸透していませんが、一部の大学やコンビニエンスストア、テーマパーク、さらには自動販売機など幅広いジャンルでの導入が検討されています。
海外では「顔認証決済が当たり前」になりつつある国も存在します。国によってテクノロジーの進歩に差はありますが、日本においても近い将来、顔認証決済が人々の生活を支えるインフラとなる可能性があります。
※顔認証についてはこちらの記事でも解説しておりますので、あわせてご確認ください。
顔認証決済の仕組みとは?
前述のように、顔認証決済は顔データとクレジットカードなどの決済手段を紐付けることで決済を可能とします。実際に決済がされるまでの手順は以下の通りです。
- 利用者が決済サービスに顔データを登録する
- 決済手段を登録する
- 商品購入時、レジの前で顔認証を行う
- 確認コードを入力する(サービスによる)
まずは利用者が決済サービスをインストール(ログイン)し、スマートフォンのカメラなどから顔データを登録します。同時にクレジットカードなどの決済手段を登録したら、事前準備は完了です。
商品を購入する際は、レジの前にあるカメラで顔認証を行います。サービスによっては認証精度を高めるため、あらかじめ確認コードなどを設定し、決済時にスマートフォンにコードを入力するなどの、2要素認証をする場合もあります。
顔認証決済のメリットとは?
日本ではまだ浸透していない顔認証決済ですが、数多くのメリットがあります。なかでも代表的なメリットは以下の3つです。
- 手ぶらで支払いができる
- 施設側の負担が軽くなる
- パスワード紛失のリスクがない
1. 手ぶらで支払いができる
1つ目は「手ぶらで支払いができる」ことです。基本的には顔をカメラに向けるだけで決済が完了するため、現金やクレジットカードを持ち歩く必要がありません。スマートフォンを取り出す必要もないため、スムーズな支払いが可能です。また顔認証システム自体が非接触なので、新型コロナウイルスなどの感染症対策にも役立ちます。最近では、マスクを着けたまま本人を識別できる顔認証システムもあり、顔認証技術は進化しています。
2. 施設側の負担が軽くなる
2つ目は「施設側の負担が軽くなる」ことです。顔認証決済を導入していれば、レジでの現金受け渡しをはじめ、クレジットカードの暗証番号入力やサインを確認する、スマートフォンのバーコードを読み取るなどの手間がかかりません。このようにレジにおける接客時間が短くなるため、施設側の人件費削減につながります。大型施設の場合、レジの数を削減でき、売り場面積を広くすることも可能です。
さらに利用者側もスマートに支払いができるため一石二鳥です。特にスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店では、レジの待ち時間の軽減など、利用者の満足度向上につながりやすいでしょう。
3. パスワード管理の手間が不要
3つ目は「パスワード紛失のリスクがない」ことです。クレジットカードやスマホ決済などのキャッシュレス決済では、パスワードが必要な場合があります。パスワードを忘れてしまって決済できなかったという経験がある方もいるでしょう。
顔認証決済では「顔」がパスワードとなっているため、数字など文字列パスワードが必要ありません。当然、パスワードの覗き見によるリスクもありません。スマホ決済でありがちなログインやログアウトの手間もないため、他の支払方法と比べても格段にスピーディーでセキュアな決済が可能です。
顔認証決済の課題とは?
顔認証決済には多くのメリットがある一方、いくつか課題も残っています。特に押さえておきたいのは以下の2つです。
- セキュリティに懸念が残る
- 個人情報が漏洩してしまう可能性がある
1. セキュリティに懸念が残る
1つ目は「セキュリティに懸念が残る」こと。顔認証はICカードやパスワードよりセキュリティレベルは高いですが、情報が漏洩してしまった場合のリスクが大きくなります。さらに顔データはICカードやパスワードとは違って「変更しにくい」ため、情報漏洩後の対応が難しいというデメリットがあります。
また顔認証システムによっては「本人ではないのに認証してしまう」「本人なのに認証されない」といったケースも。そのためRGBカメラのみを用いた2Dタイプよりも、赤外線カメラを併用し、写真や動画での「なりすまし」を防止できる3Dタイプのシステムを採用するなどの対策が必要です。
2. 個人情報が漏洩してしまう可能性がある
2つ目は「個人情報が漏洩してしまう可能性がある」ことです。たとえば防犯カメラなどと併用していた場合、防犯カメラに記録された本人の行動履歴や、顔データと紐づいているクレジットカード情報が抜き取られてしまう可能性もゼロではありません。これらを防ぐために、最新のセキュリティソフトを導入する、セキュリティの高いクラウドサービスを選ぶ、個人の行動やクレジットカード情報が特定されないよう、システム内の情報を加工する、などの対策が必要です。
顔認証決済の事例
日本ではあまり目にすることのない顔認証決済ですが、実は、導入テストや検証が着々と進んでいます。ここでは、顔認証決済を導入している企業や店舗の事例をいくつかご紹介します。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアでは、顔認証決済を取り入れた店舗をオープンさせました。実証実験の段階ではあるものの、セルフレジで顔認証決済を導入しています。
同システムでは、専用端末を使って顔画像とクレジットカード情報、確認用コードを事前に登録。レジでの顔認証に加えて「確認用コード」の入力も同時に行うため、高いセキュリティ性が保たれています。
また、オフィスビル内の店舗では、顔認証技術を用いた「無人コンビニ」を導入。センサーを用いたセンシング技術なども併用し、レジの無人化を実現しています。
家電量販店
大手家電量販店では、独自の顔認証決済システムを導入しています。まず、自社のカード会員向けにオンライン決済アプリを提供。加えてアプリ内にユーザー自身の顔画像を登録することで顔認証決済を実現しています。
また独自にアプリを提供しているため、顔認証によるスムーズな決済だけでなく、メールマガジンや保証、ポイント還元などあらゆるサービスを付帯できるのが特長です。
全国各地に店舗を構えている同店。現在では東京都内の3店舗をはじめ全国30店舗以上で顔認証決済を導入しています。
顔認証決済はコロナ禍で一層注目されている
日本ではまだまだこれからの顔認証決済ですが、感染症対策やレジの省人化など、コロナ禍において多くのメリットがあるため、検討を始める企業が増えています。しかし、顔認証のみで決済を実施することには、まだ不安が残ると思います。顔認証システムに加えて、虹彩などの生体認証や、確認用コードを用いた2要素認証を行ったりするケースもあるため、検討時には、どの程度のセキュリティを構築するのか、専用端末などをしっかりと確認しておきましょう。
日本コンピュータビジョン株式会社(JCV)は、マスクを付けたままでも本人を識別できる高精度な顔認証システムを提供。決済システムと組み合わせることで、コロナ対策と、非対面でのスムーズな決済が両立可能です。