現在ではさまざまなシーンで活用されている顔認証ですが、顔認証が始まった時期や初期の認証技術についてはあまり知られていません。
そこで今回は、顔認証技術の歴史や進化、マスク着用時の認証精度改善などについて詳しく解説していきます。顔認証技術の活用事例も紹介していきますので、顔認証システムの導入を検討しているという方も、ぜひ参考にしてください。
1964年にスタートした顔認証の歴史
今でこそ当たり前のごとく普及した顔認証の技術ですが、どのようにして技術は生まれたのでしょうか。まずは、顔認証の歴史の始まりからご紹介します。
1964年、研究のため顔の特徴を収集したことから「顔認証」の考えが生まれる
機械による顔認証は、1964年は東西冷戦の最中に始まったとされています。当時は顔の20個の特徴を手動で入力するという方法を採用していたようです。この方法では認証精度に限界がありましたが、更なる技術の進化には大幅な時間がかかりました。
1988年に再スタートを切る
1973年になると、いよいよ顔を自動認識するシステムの研究が開始されます。その後、1988年には、現在使われている顔認証システムの基盤ともいえる「統計的な手法」を使った顔認証がスタートしました。当時は顔の典型的なパターンを分類したうえで、行列計算を用いていたようです。
1991年以降は顔認証技術が顕著に進化していく
1991年になると、顔認証アルゴリズムが登場し、1993年には、アメリカで顔認証のベンチマークテストが始まりました。このベンチマークテストによって、顔認証の技術は大幅な進歩を遂げました。なお、ベンチマークテストのスポンサーは元々国防総省でしたが、現在は米国国立標準技術研究所に引き継がれています。
アメリカ同時多発テロの発生がきっかけで顔認証は急速に進化する
顔認証の需要が高まる大きなきっかけとなったのは、2001年のアメリカ同時多発テロです。テロを防ぐために各空港で顔認証技術が導入されるようになり、顔写真のデータが入っている電子パスポートの発行も始まりました。
犯罪に関わる部分以外でも顔認証技術が身近なところで活用される
アメリカ同時多発テロをきっかけとして、犯罪防止に役立つ新たな技術開発が進められてきた顔認証ですが、2000年代半ばになると、デジタルカメラやガラケー、入場ゲートシステムなど、防犯対策以外のさまざまなシーンで導入されるようになります。
現在では、オフィスの出退勤管理やマンション、工場などのセキュリティレベル向上、無人レジでの認証などにも顔認証の技術が活用されています。
顔認証技術の更なる進化ーマスクへの適応ー
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、マスク着用時の認証精度向上は急務となり、更なる進化を求められるようになりました。
そこでここからは、マスク着用時の精度向上に関する歴史と取り組みを詳しくご紹介していきます。
顔認証アルゴリズムは、マスクを着用した場合一定の確率でエラーが検出されるというデータがある
顔認証は光の加減や角度の違いでも認識精度が低下する傾向にありますが、マスクの着用は大幅に認証精度を下げる要因となります。
なお、2020年7月に米国立標準技術研究所(NIST)は、マスクを着用しているときのエラー率は、アルゴリズムの性能によって5%~50%になると発表しています。
マスク着用のままの顔認証精度は世界中のエンジニアが改善に取り組む
マスク着用時の認証精度低下問題を解消するため、世界各国のエンジニアが新しい技術の開発に取り組みます。その後2021年の年明けには、アメリカ国土安全保障省科学技術局が、最新の顔認証技術によって、マスクをしている飛行機の搭乗客の顔はほぼ正確に識別できると発表しました。
約半年でここまでの進化を遂げたのは驚異的と言ってもいいでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって急速に進化した顔認証の技術は、次第に防犯対策だけではなく、マスクを着用したままでの本人認証が必要となるさまざまなシーンで活用されるようになってきています。
日本におけるマスク着用認証の課題に対する成果
国内でもマスク着用時の認証精度に対する取り組みが進められ、多くの企業が成果を上げました。
A企業
2020年9月の段階でマスク着用時の認証率99.9%以上を実現する顔認証エンジンを開発しています。新しいエンジンは、従来のように目・鼻・口から特徴点を抽出するのではなく、「目」に重点を置いて特徴点を抽出する仕組みになっているため、マスクの着用時でも認証精度が低下することはありません。
B企業
2020年にマスク着用時の顔検出率を従来の3.1倍、顔認証率2.2倍向上させた顔認証技術の提供を開始。同時に、マスクを着用していても性別と年齢を推定できる来客分析サービスの開発にも成功しています。
C企業
2021年に顔認証と生体認証を融合させたマルチ生体認証を開発し、マスク着用時でも99%以上という高い精度による本人認証を成功させています。
進化した顔認証技術の活用事例を紹介
このように短期間で大きな進化を遂げた顔認証技術は、さまざまなシーンで活用されています。顔認証技術の主な活用事例を見ていきましょう。
入退室管理時に活用
入退室の管理に顔認証を活用している企業が増えています。入退室管理にICカードなどを使用している場合は、紛失や盗難などによる悪用リスクを考慮しなければいけません。また、紛失時の再発行にも手間がかかります。指紋認証を採用しているケースでは、両手に荷物をもっていると認証できず、手が乾燥する冬場などでは認証精度が下がるなどの問題も発生します。
しかし、顔認証はシステムが顔を認識して自動的に本人認証を行うため、両手が塞がっていても問題なく認証でき、カードの盗難や紛失のリスクもありません。
万引き防犯システムに活用
小売店などでは、防犯システムに顔認証が採用されています。
従来の防犯カメラを使った方法では死角が多いため、全ての犯罪を防ぐのは難しいという実情がありました。しかし、顔認証システムを使えば、前歴のある人物をデータベースに登録することで、該当人物の来店をカメラが捉えた瞬間にアラートを通知させることが可能です。この機能は、万引きの防止だけではなく、店舗内に配置する警備員の人件費削減に役立ちます。
医療施設における患者の管理に活用
外出禁止となっている患者が勝手に抜け出すなどの問題を抱える医療施設でも、顔認証システムは活用されています。主な導入目的は患者の管理と事故防止です。
患者の顔データを顔認証システムに登録しておけば、出口に近づいた患者をカメラが感知したときにアラートを送信させることができます。最小限の人員とコストで患者の管理ができるため、スタッフの負担軽減と人件費の削減に役立ちます。
顔認証は世界中を変革する新しい技術に進化し続ける
世界中のエンジニアが改善に取り組み顕著な進化を見せた顔認証技術は、幅広いシーンで活用されるようになりました。現在では日本のみならず世界中に普及し、世の中を大きく変革した技術として皆さんの生活を支えています。
なお、JCVでは、99%以上という高い認識精度で、さまざまな環境下での顔認証を実現する技術を提供しています。マスクを着用したままでの本人認証も可能です。新型コロナウイルス感染症対策として非接触認証の重要度は今後も高まっていくものと予想されるため、この機会にJCVの顔認証システム導入を検討してみてはいかがでしょうか。