ディープラーニングの発展に伴い、コンピュータに人間の視覚を与えるコンピュータビジョン・マシンビジョンの技術は急速に拡がりました。近年、コンピュータビジョンやマシンビジョンは簡単な装置で実現でき、容易に導入できます。
そんなコンピュータビジョン・マシンビジョンとは、一体どのようなものなのでしょうか。また、どのような違いがあるのでしょうか。この記事では、コンピュータビジョン・マシンビジョンの仕組みや違い・活用事例について紹介します。
コンピュータビジョン・マシンビジョンとは?
コンピュータビジョン・マシンビジョンとはどのようなものでしょうか。ここでは、概要について解説します。
コンピュータビジョンとは
コンピュータビジョンとは、カメラで撮影した画像を処理することによって、画像の人物や物体をコンピュータに識別・判断させる学術分野です。ディープラーニングなどによってコンピュータに人間の視覚を実現させることを目的としています。
コンピュータビジョンという学術分野は1960年代には存在していたといわれており、近年のディープラーニングの発展・実用化に伴い、顔認証システムなど身近なものに活用されるようになってきました。
マシンビジョンとは
マシンビジョンとは、カメラに映った画像を処理し、処理結果に基づいて機器を動作させる技術です。産業機器に人間の視覚を持たせ、そこから判別する機能を提供します。食品や医療の評価・分析の自動化などに活用されています。
コンピュータビジョン・マシンビジョンの仕組み
近年急速に実用化するコンピュータビジョンとマシンビジョンですが、それぞれの仕組みはどのようになっているのでしょうか。詳しく説明します。
コンピュータビジョンの仕組み
コンピュータビジョンは以下の仕組みで提供されます。
①ビデオカメラなどによって画像が取り込まれる
②画像を分析するデバイスに送られ、パターン認識によって何の画像かが判断される
③結果を出力する
パターン認識とは、特徴をもとにそれが何であるか判断する行動のことです。コンピュータビジョンは、ディープラーニングを使用することによりさらに高精度な認識が可能になります。
マシンビジョンの仕組み
マシンビジョンはカメラ、照明、ソフトウェアで構成されており、以下の仕組みで提供されます。
①ビデオカメラなどによって画像が取り込まれる
②画像処理をするソフトウェアに取り込まれ、「パターン認識」や「エッジ検出」などの画像処理が行われて結果が判断される
③結果を出力し、結果によって別の産業機器などを動かす
マシンビジョンはこの過程により、人間が行っていた不良品の目視などのタスクを高速に高精度で、自動で行うのです。
コンピュータビジョン・マシンビジョンの特徴と違い
それではコンピュータビジョンとマシンビジョンにはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、それぞれの特徴・違いを説明します。
コンピュータビジョンの特徴
コンピュータビジョンはディープラーニングを使用することで、より正確な画像認識ができます。その技術は、顔認識や顔認証・AR・医療や車の自動走行に使われています。
より生活に身近な技術に活用されているのが、コンピュータビジョンなのです。
マシンビジョンの特徴
マシンビジョンは、人間が行ってきた目視検査を自動化するものです。人間の目では判別できない小さな傷を見分けたり、見た目で分からない違いを見分けたりすることができるのが特徴で、食品や医療の評価・分析の自動化をサポートします。
特に、産業分野の自動検査や整列部品・医療器具などのピッキングに利用されています。
コンピュータビジョンとマシンビジョンの違い
コンピュータビジョンとマシンビジョンとの違いは、「出力結果により機械などを制御するかどうか」です。
コンピュータビジョンの出力は制御のみではなく画像処理全般を指すのに対し、マシンビジョンは自動制御のための視覚機能を指します。マシンビジョンは、出力した結果によりロボットや産業機器を動かすのです。
コンピュータビジョン・マシンビジョンの活用事例
ここまで、コンピュータビジョンとマシンビジョンの特徴や違いについて説明してきましたが、それぞれの活用事例にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく説明します。
コンピュータビジョンの活用事例
まずはコンピュータビジョンの活用事例を紹介しましょう。コンピュータビジョンは、企業や業界向けはもちろん、普段の生活で利用できるような個人向けの活用事例も多く存在します。
顔認証システム
カメラに映った画像から個人を特定する顔認証システムは、コンピュータビジョンの一例です。
顔認証は、画像から人間の顔を検知し、目や鼻や口といった特徴点から事前に登録された個人と照合して人物を特定する技術です。従業員の出退勤管理や決済システム、オンラインサービスでの本人確認などに活用されています。
AR(拡張現実)
AR(拡張現実)もコンピュータビジョンの一つです。ARは「Augmented Reality(アグメンティッド・リアリティ)」の略で、現実を仮想的に拡張する技術です。画像認識技術で現実を認識し、コンピュータグラフィックスで仮想世界を実現します。
バーチャルメイクや顔加工アプリ、家具購入前のスマートフォンカメラを用いた試し置きのサービスなどに活用されています。
医療画像診断
コンピュータビジョンは医療画像診断にも活用されており、例えば、画像認識技術で患部を見つけることに応用されています。ディープラーニングで患部の画像を学習させ、検出精度を向上させられるのです。
また、内視鏡診断でリアルタイムに大腸癌やポリープを見つけ出したり、脳のMRI画像を解析したりできるソフトウェアもあり、実用化が進んでいます。
マシンビジョンの活用事例
次に、マシンビジョンの活用事例について紹介します。マシンビジョンは人間が行っていた作業を担い、作業効率を劇的に改善することから、負担軽減・効率化が求められる企業や業界で活躍しています。
ピッキングシステム
ピッキングシステムは、マシンビジョンを組み込んだシステムの一例です。小型のセンサーをロボットのアーム部分に取り付けることで、バラ積み状態の部品のピッキングが自動で行えます。
あるシステムでは部品の撮影から対象物の位置姿勢認識まで0.5秒で行えるよう高速化されており、ロボットのハンド部分に画像センサーが組み込まれたカメラを搭載することで、さまざまな位置姿勢の部品への対応を可能にしています。
物流ラベル一括読み込み
物流ラベルの一括読み込みもマシンビジョンの一例です。
物流業界では、ハンディデバイスを用いて一つひとつコードを読み取り、物の管理を行うのが主流でした。しかし、画像認識ソフトにマシンビジョン、ディープラーニングを組み込むことで、複数のフォントやバーコードが混在した状態でも文字やコードの一括読み取りが可能になったのです。
文字の向きやフォントに依存することなく高精度な認識が可能で、コードの読み取りの工数を削減できます。
食品工場での異物検査
食品工場の異物検査にも、マシンビジョンが活用されています。ベルトコンベアに流れてくる原材料の外観と色から異物や不良品を検知し、それらを排除する仕組みです。生産性の向上や目視検査の工数の削減につながっています。
なお食品分野では、異物混入検査以外にも形状や種類による選別や外観検査にもマシンビジョンが活用されています。
ディープラーニングの発展とともに進化するコンピュータビジョンとマシンビジョン
コンピュータビジョンとマシンビジョンは、画像処理のアルゴリズムにディープラーニングを組み込むことによって実用まで発展しました。
コンピュータビジョンとマシンビジョンの違いは、画像処理した後にその結果を機械の制御に組み込むかどうかです。今後は自動車の自動運転や医療にも組み込まれ、人の手で行われていた作業を自動化してくれるようになるでしょう。
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