コロナ禍や人手不足の影響を大きく受けている小売業界では、この先どのような未来が考えられるのでしょうか。
消費者の嗜好が多様化し、様々な価値観で行なわれる消費活動に対応するために、時代を見越した変化が小売業界には求められると考えられます。
お客様の情報収集や分析、商品のレコメンドなど、小売業として必要な業務は多岐に渡ります。
この記事では、IT技術により実現される小売業の未来を考えます。
少子高齢化社会
少子高齢化社会は着実に進行しており、日本全体の課題となっています。
総務省の調査※1によると、日本の生産年齢人口は減少を続けており、高齢化率は2060年には40%に迫ると予測されています。
これにより、小売業では「労働人口の減少」「購入客の高齢化や減少」が大きな課題になると考えられるのではないでしょうか。
※1参考:総務省「令和2年 情報通信白書」
労働人口の減少
現在でも小売業界の人手不足は課題となっていますが、今後はさらに深刻化する可能性も否定できません。
特定の地域で経営するリアル店舗では、その地域の人口によって人材確保の難易度にも大きな差が出てきます。
可能な限り少ない人数で店舗オペレーションを行なうことが求められますが、人間が行なう作業の効率化や最適化だけではやはり限界があるのではないでしょうか。
購入客の高齢化や減少
人口減少は購入客の減少にも繋がるほか、店舗へ訪れるお客様の高齢化も進むことが考えられます。
高齢化による人口減少は、店舗へ訪れるお客様が減少することにも繋がります。
このような状況でビジネスと展開するためには、お客様に適切なサービスを提供して満足度を高め、リピート客を獲得していくことが今後の店舗運営において重要な要素と言えるのではないでしょうか。
わかりやすい操作で便利なサービスを享受できる店舗が、高齢化するお客様にとって利用したい店舗となっていくと考えられます。
これらの課題を解決するために、リアル店舗には今後どのような変化が求められるのでしょうか。
リアル店舗の経営はどのような未来が考えられるか
これまで以上に顧客データの重要性が増すほか、少ない従業員でも店舗オペレーションを行える仕組みが活用されると考えられます。
AIの活用
これまでは熟練者の知識や経験が必要であった仕入れや在庫管理を、AIにより行なうサービスが登場しています。
長期的な商品の売上げデータをAIにより分析することで、根拠となるデータに基づいた店舗運営が可能となるのではないでしょうか。
従業員の工数削減にも繋がり、従業員の確保が難しくなっている現代でも少ない人数で店舗運営が可能となると考えられます。
データ活用
顧客情報を収集・分析して店舗の経営戦略に活用することは店舗運営を行なう上で重要です。
アンケート調査や従業員による入力など、各企業は顧客の情報収集に力を入れています。
顔認証システムは、顔認証を行なった顧客の属性情報を自動的に収集・蓄積することが可能です。
その精度は年々向上しており、場合によっては人間の判断精度を上回る水準に達することもあるため、実用的な情報を大量に収集するために有力な選択肢と言えます。
オンライン接客
コロナ禍による非接触需要はもちろん、非対面のオンライン接客により接客効率の向上も見込めます。
従業員が現地にいる必要も無く、複数店舗とインターネットで接続し、接客を行えることがオンライン接客の大きな強みです。
接客員が手元の端末を操作することでデータを素早く表示することも可能なため、対面接客よりも優れた点もあります。
決済手段
現金だけでなく、クレジットカードをはじめとした電子マネーやQRコードなどのキャッシュレス決済が主流となっています。無人レジを設置している店舗も見かけるようになりました。
スマートフォンやICカードを必要とするキャッシュレス決済が一般的ですが、最近注目を集めているのが顔認証決済です。モノを必要とせず、自分の顔が決済手段となります。
ファーストキッチン株式会社では、顔認証決済に取り組んでいます。人ならではの温かみのある接客や声かけ、さらにマーケティング活動などは難しいという課題から導入を進めており、お客様の好みや傾向のデータを蓄積することで商品開発に活用されています。
無人店舗
店員が存在しない無人店舗を開店する企業が登場しています。
現在では実験的な面もあり、今後も形を変えていくと予想されますが、一例として以下の仕組みで実施されている店舗が存在します。
1.顔情報と決済情報をシステムに登録
2.入店時にお客様の顔情報を認証
3.商品棚から手に取った商品を検知
4.登録した顔情報に紐付く決済情報を利用して決済完了
運営費やシステムコストなど、実際は単純計算とはなりませんが、店舗運営コストの多くを占める人件費を大きく削減する効果を期待できます。
店舗運営の効率化を実現しながらお客様の満足度に繋がる仕組みが、今後も登場してくるのでは無いでしょうか。
新しい顧客体験
店舗経営だけではなく、お客様の体験にも変化が予想されます。
商品レコメンド
顔情報から属性を判別し、お客様個人にマッチした情報を提供することが可能になってきました。
興味を持っていない広告を煩わしく感じる人は多いですが、有益な情報を届ける確率を上げることでストレスを削減し、購買行動に繋がることも期待できます。
ARの活用
商品の詳細データ表示やARを設定した広告により、具体的でインパクトのある商品PRが可能になります。
陳列棚の脇にモニターを設置して、プロモーション映像を流すといった光景を店舗で見かけることがあります。
ARを設定した商品にお客様がスマートフォンをかざすことでARプロモーション映像が流れる等の形であれば、モニターの設置不要でお客様へプロモーションを届けることが可能です。
ARはスマートフォンでの再生が現在一般的であり、多くの方が利用しやすい点もメリットです。
通販やデリバリー
店舗へ足を運ばなくても商品を購入できる形として、現在でも人気を博しています。
Webサイトやアプリにて購入する際の決済方法として、生体認証の利用が広がっています。
顔認証であれば手元の端末で顔認証を行なうだけで決済を完了でき、これまで以上に安全で手軽な商品購入の形が実現されます。
高齢化する社会では店舗へ足を運ぶ機会が減ってしまうことも考えられるため、お客様が利用しやすい形の通販・デリバリーサービスは重要性を増すと考えられるのでは無いでしょうか。
商品を選びやすく、手軽に購入できる形は企業側、購入客側双方が求める形です。
これらをいかに実現していくかで、顧客体験や満足度に大きな影響を与えると考えられます。
これからの小売業には大きな変化が求められる
小売業は社会的な情勢や消費者の嗜好など、多くの環境の影響を受けやすい傾向にあります。
これまでは小売業に従事する人間の工夫や努力により多くの課題を解決してきましたが、これからは別の観点が重要となってくるのではないでしょうか。
本記事で紹介した少子高齢化は、今後避けることが難しい課題のひとつです。
減少する労働人口への対策として、AIによる作業の自動化・効率化は重要なカギとなることが予想されます。
また、店舗ではお客様に対するサービス品質の向上も極めて重要な要素です。
お客様が様々な消費に分散する現代では、自店舗の魅力を知ってもらう必要があります。
顔認証システムであればお客様の情報を分析し、これまで以上に綿密でお客様個人にあったサービスを立案するヒントとなるデータを蓄積することができます。
今後のビジネス環境に適したシステムを活用することで、店舗経営の大きな力となるのではないでしょうか。