活用の場が広がっている生体認証は、サービスの増加や導入難易度の低下もあり多くの組織で導入が進んでいます。従来のパスワードや暗証番号による認証と比較して、セキュリティの向上や認証作業の効率化を見込めることも生体認証の魅力です。
しかし、生体認証は適切な運用を行なわなければ、思わぬトラブルに繋がってしまうリスクもあります。
この記事では、注意したい生体認証のリスクや対処法を解説します。
生体認証を活用するメリット
生体認証が多くのシーンで活用されるメリットとして考えられるポイントを紹介します。
セキュリティ需要
セキュリティの脅威が高まる現代では、パスワードなど従来の認証手段に比べて高いセキュリティが求められています。
指紋認証や顔認証、虹彩認証などの生体情報を利用した認証は、不正アクセスやセキュリティの脅威を効果的に防ぐことができます。
業務効率化
従来の認証手段と比較して、認証の手間を削減することができるため、業務の効率化に繋がります。
例えば、顔認証を利用した入退室管理システムでは、カードキーを持ち歩く手間がなく、スムーズな入退室が可能となります。
パソコンやスマートフォンのロック解除でも、パスワードを手入力することなく認証することができます。
非接触需要
コロナ禍においては非接触の需要が急増し、主に顔認証を導入した施設や企業は多くあります。
非接触かつ前述のような利点もあることから、これから新規導入を検討している組織も多いと考えられます。
セキュリティの向上と効率化は、生体認証の需要が拡大する背景として特に大きな要因と考えられます。
生体認証のリスクとは
生体認証により、セキュリティや認証の手軽さは格段に向上します。
ただし、生体認証を活用する上で、知っておきたいリスクもあります。
情報漏洩
生体情報は本人が忘れてしまうこともなく、特定の身体の部位を読み取るだけで認証を行えます。メリットでもありますが、身体情報を意図的に変更することは困難です。
認証に利用している生体情報が漏洩してしまった場合、第三者が保持している生体情報を利用し続けなければならなくなる恐れがあります。
誤認識
生体認証の認証精度は年々向上しており、日常的な利用においてはほとんど不便を感じない精度に達しています。
しかし、パスワードなどの文字情報と異なり、認証環境によって精度に影響が出てしまう点は注意が必要です。
指紋認証であれば指の汚れや怪我、顔認証であれば極端に光量の多い場所が該当します。
プライバシーへの配慮
生体情報は「個人識別符号」として扱われ、個人情報に該当します。
生体認証を運用している側と利用者側で認識の齟齬が発生すると、プライバシーの侵害などのトラブルに発展してしまうリスクがあります。
▶︎ 参考「個人情報保護委員会 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
法令
令和4年4月1日より、個人データの漏洩等が発生し、個人の権利利益を害する恐れがある場合は個人情報保護委員会及び本人への通知が義務化されました。
万が一情報漏洩が発生した場合は、組織の判断ではなく義務として適切な対応を取る必要があります。
▶︎ 参考「個人情報保護委員会 漏えい等報告・本人への通知の義務化について」
これらのリスクには、どのような対処が考えられるでしょうか。
生体認証のリスクを回避して安全に活用するためには?
生体認証のリスクを防止するための考え方を紹介します。
情報漏洩への対策
情報漏洩が発生しないよう、データの暗号化や堅牢なシステム構成を構築する必要があります。
高度なセキュリティ知識やIT技術が求められるため、実現が難しい組織も多いでしょう。
そのため、生体認証を提供している事業者が管理するクラウド環境に保存する選択肢も考えられます。
誤認識への対策
利用する生体認証方式に合わせ、可能な限り認証を行ないやすい環境を整えることが大切です。
例えば、顔認証であれば安定した光量の場所に認証機器を設置することが考えられます。
また、利用者に対して認証の妨げになる要素を説明することも効果的です。
プライバシー保護
生体情報を利用する目的や範囲を明確にし、利用者へ十分な説明を行なう必要があります。
組織内での利用であれば説明会を実施するなど、各従業員の理解を促進すると良いでしょう。
法令遵守
情報漏洩発生時の個人情報保護委員会への報告や内部での対応マニュアルなど、事前に用意できるものは用意しておくことが重要です。
大規模な情報漏洩発生時は非常に大きなインパクトがあり、組織内は混乱する恐れがあります。
適切な対応を検討する猶予がない可能性もあるため、事前に検討しておくと良いでしょう。
生体認証を安全に利用するための準備や仕組み作りが大切です。
安全性の高い生体認証でも使い方には注意が必要
手軽にセキュアな認証を実現できる認証方式として、生体認証は様々なシーンで活用されています。
IDとパスワードによる認証や、ICカードを用いた認証と比較して、利便性やセキュリティの向上を期待できるでしょう。
しかし、適切な運用を行なわなければ期待した効果を得ることは難しく、セキュリティ事故や法令違反に繋がってしまうリスクは十分に理解する必要があるでしょう。
生体認証システムを導入するだけで終わりではなく、継続的に自組織の運用を見直し、改善を続けることが大切です。