実店舗を経営する企業にとって、人材不足や万引き被害は深刻な課題です。これらの問題に対処するために、顔認証システムを活用して不審者登録を行うことは一つの有効なアプローチと考えられます。
顔情報により顧客の特性を自動的に検出し、人間が行なう監視や警戒の負担を抑えることができるためです。
しかし、顔情報の収集やその取り扱いは、慎重を期さなければ時に重大なトラブルに発展してしまうリスクもあります。
この記事では、顔認証システムによる不審者登録について解説します。
店舗や施設が抱える課題
実店舗を経営する企業において、人材不足や万引きの被害は目下の課題となっています。
人材不足・人件費高騰
深刻化する人材不足と人件費の高騰は、店舗運営の大きな課題となっています。
特に、防犯や監視に必要な人員は直接的に店舗の利益へ繋がるものではなく、コストとしての負担が増大してしまうことも課題と言えるでしょう。
盗難被害
盗難の被害は店舗にとって非常に大きく、1つの商品の盗難額を取り戻すためには数点~数十点の商品を売らなければならないものもあるでしょう。
特に大規模な店舗では顧客を完全に把握することが難しく、防犯対策の必要性とそれに伴うコストが課題となります。
顔認証システムによる防犯対策
前述の課題に対し、顔認証システムを導入することで一定の効果を期待することができます。
顔認証は生体認証の一つで、人間の顔を検出してデータベースに登録された顔データとのマッチングを行なう仕組みです。
スマートフォンやパソコンのログインで利用されるシーンが多いですが、認証以外にもカメラで来店者の顔を識別し、事前に登録しておいた不審者や不審な行動の検出に応用することが可能です。
顔認証の仕組みについてはこちらで詳しく解説しています。
▶︎ 顔認証の仕組みとは?顔認証AIの活用や感染症対策などDX推進への役立て方を解説
店内の監視工数削減
カメラにより店内を監視することで、人件費の抑制に繋がることを期待できます。
従業員の店内を見回る工数が削減されることで、別の業務への人員配置をすることも考えられるでしょう。
盗難対策
一般的な防犯カメラは、盗難などのトラブルが発生した際に映像を確認する目的で設置しますが、顔認証システムと連携することで不審な行動を検知することが可能です。
店内の監視や見回りの工数削減はもちろん、盗難行為を素早く検知することによる被害の抑制を見込むことができるのではないでしょうか。
顔認証システムにより、これまで人間が行なっていた店内の監視や不審者への警戒を自動化することに繋がります。
顔認証システムへ不審者登録をするメリット
不審者を顔認証システムへ登録しておくことで、事業者側には様々なメリットがあります。
犯罪抑止
店舗での万引きや悪質なイタズラは、従業員の目を盗んで実行されるケースがほとんどでしょう。
そのため、カメラにより店内が漏れなく監視されていることが分かっている状態であれば、このような犯罪行為の抑止に繋がると考えられます。
犯罪行為を検知し、被害を抑えることも重要ですが、そもそもの犯罪発生を予防できるのであればそちらの方が望ましいと言えるでしょう。
事前に警戒できる
不審者の来店や不審な行為をカメラが検出し、その時点で従業員へ通知することができます。
顔認証システムでも多くの不審行為や犯罪行為を検知することができますが、人間によるチェックも行なうことで防犯性はさらに高まるでしょう。
人件費や従業員の負担などの懸念により、常に人間による監視を行なうことは難しいですが、特定のタイミングのみであれば比較的小さな負担で対応できると考えられます。
監視・警備コストの削減
不審者を自動的に検出するシステムを導入することで、人間による監視や警備の必要性が大幅に減少します。
人件費の高騰や人材不足の課題へのアプローチとなり、店舗や施設の運営コストが削減されることを期待できます。
顔認証システムにより業務工数を削減した上で、安全性の向上を期待できる点がメリットと言えます。
顔認証システムへ不審者登録をする注意点
前述のとおり、不審者登録をすることには多くのメリットがあります。
しかし、注意するべきポイントも存在します。
顧客からの理解
顔認証システムの導入や不審者登録に関しては、顧客の理解を得ることが重要です。
顧客の顔情報の収集目的や用途を明確にし、顧客が不安に感じる要素をどのようなポリシーで運用しているのかを明確に示す必要があるでしょう。
管理や運用がずさんな状態になってしまうと、顧客からの不審や反発、トラブルが発生してしまうリスクもあります。
個人情報保護
顔認証システムを使用する際には、個人情報保護の観点でも注意が必要です。
顔情報は個人情報として定められており、不正アクセスの被害や情報流出が発生しないよう厳重な管理をする責任が企業にはあります。
万が一セキュリティ事故が発生すると、企業の信頼が大きく失墜してしまうだけではなく、高額な賠償が必要となるケースもあります。
不審者の基準やデータの消去
不審者の基準をどう設定するか、不審者として登録したデータはどの程度の期間保持するかなど、具体的な運用方針を明確にすることが求められます。
統一されたルールの元で運用されなければ、問題行動をなにもしていない顧客を不審者扱いしてしまうリスクや、データの信頼性が低下して顔認証システムが本来の効果を発揮できなくなる恐れもあるでしょう。
不審者登録は顔認証システムの活用方法としては比較的新しく、活用方針は慎重に定める必要があります。
事業者と顧客が納得できるバランスを意識しよう
顔認証システムによる不審者登録は、事業者にとって人材不足や万引き被害対策に効果的な手段であり、コスト削減や犯罪抑止といったメリットを享受できます。一方で、その導入や運用には顧客の理解や個人情報保護の観点からの配慮が不可欠となります。
顔認証システムは、個人を特定する重要な情報を収集・利用するため、その取り扱いを事業者が説明する必要があります。
システムの導入に当たっては、その目的や活用方法、プライバシーポリシーを顧客に対して透明に開示し、理解を得ることが重要です。
また、個人情報保護法に準じた適切な情報管理も求められます。不審者として登録したデータの保存期間や基準など、具体的な運用方針を明確に設定し、その遵守を徹底しましょう。
事業者と顧客が納得できるバランスを意識することにより、顔認証システムを効果的かつ安全に活用することが可能となります。