デバイスやサービスのセキュリティと利便性を両立できる認証として、生体認証の活用は急速な広がりを見せています。
利用者固有の生体情報を利用し、不正アクセスを防ぐ強固なセキュリティを実現することや、パスワード管理の負担を大きく軽減できるという点が、生体認証の代表的な利点と言えるでしょう。
しかし、その一方で、生体情報の安全な保管や認証システムの専門性、法令遵守といった利用する上で克服しなければならない問題点も存在しています。
この記事では、生体認証が活用される背景や現状の問題点、安全に生体認証を活用するためのポイントを解説します。
なぜ生体認証は活用が広がっているのか
多くの機器やサービスで生体認証の利用が広まる背景には、その独自のメリットが大きく寄与しています。
生体認証により、セキュリティの強化やパスワード管理の負担軽減、利便性の向上など、様々なメリットが存在します。
セキュリティの確保
パスワードやPIN等の文字列情報は、誰が入力しても文字列さえ合致していれば認証されてしまうというセキュリティリスクを抱えています。
それに対し、生体認証は、指紋や顔、静脈など、ユーザー固有の生体情報を使用します。
生体情報は偽装が難しく、基本的には本人の身体を認証装置で読み込まなければ正しく認証されることはありません。
これによりパスワードやPINよりも強固なセキュリティを実現し、不正アクセスを防ぐことに繋がります。
パスワード管理の負担軽減
生体認証の利用により、複数の認証情報を管理する負担を大きく削減することができます。パスワードの使い回しや、単純なパスワードの設定をしてしまうリスクも削減されるため、結果的にセキュリティの向上に繋がるのではないでしょうか。
また、パスワード入力間違いやパスワード忘れへの対応がなくなり、情シスなど情報管理部門の工数削減にも繋がります。
利便性の向上
デバイスから文字情報を入力しなければならないパスワードと比較して、生体認証は自分の身体を認証デバイスに読み取らせることで認証が完了します。
セキュリティを確保しつつ、利用者の利便性が向上するため業務をスムーズに進行することに繋がります。
セキュリティの強化や生産性の向上が求められる現代のビジネス環境に、生体認証はマッチした仕組みであると言えるのではないでしょうか。
生体認証の問題点
生体認証はセキュリティと利便性を両立する技術ですが、注意しておきたい問題点も存在します。
生体情報が漏洩した場合の影響
変更が難しい生体情報は、外部に漏洩した場合でも新しいパスワードを作成すると言った対応が困難になる恐れがあります。
盗まれた生体情報が何らかの方法で偽造されてしまった場合は、不正アクセスなどのリスクにも対応しなければなりません。
システムの専門性
生体認証システムは、一般的な認証技術だけではなく、生体情報を読み取る仕組みやAIによる学習など、専門的な知識が組み合わさって実現されています。
生体認証サービスは、専門知識を持たないユーザーでも利用できるように設計されていますが、導入や運用には一定の知識が必要です。
誤認識
生体認証の認証精度は年々向上しており、現在では非常に高い精度で認証を行なうことができます。
しかし、100%の精度ではなく、認証環境によって精度が下がることを理解しておくことが大切です。
法令遵守
生体認証は個人の生体情報を取り扱うため、個人情報保護法などの法令遵守が必要となります。
適切なデータ保護や運用をすることは生体認証を活用するためには必須であり、ずさんな利用は予期せぬトラブルを招くリスクもあるでしょう。
生体認証を活用するためには、これらの問題点をいかに克服するかが重要です。
問題点を克服し、安全に生体認証を活用するためのポイント
生体認証はその利便性とセキュリティ性から広く採用されていますが、その一方で問題点も存在します。それらの問題を克服し、安全に生体認証を活用するためのポイントについて説明します。
セキュアなデータ保護が可能なサービスを選定する
生体認証に利用する生体データは、重要な個人情報です。
そのため、データの暗号化やデータを保管する場所の物理的なセキュリティ、様々なサイバー攻撃を想定したセキュリティシステムを構築し、不正アクセスや内部不正など脅威から厳重に守る必要があります。
多くの場合、自社だけでこのようなセキュリティ環境を実現することは困難でしょう。
そのため、データ保護を含めて提供されるサービスを選定することが重要です。
柔軟性が高いサービスを選定する
高い専門性が要求される生体認証ですが、サービスによっては利用しやすいAPIが提供され、自社のシステムに生体認証を組み込む形で利用できるサービスも存在します。
固定的な用途だけではなく、自社独自のニーズに対応する仕組みを作ることも可能であるため、用途に応じて柔軟性も加味したサービス選定を行ないましょう。
多要素認証を取り入れる
多要素認証は、生体認証だけではなくパスワードやトークンなど、別の認証方式を併用することで実現します。
万が一生体情報を偽装された場合でも、多要素認証により不正アクセスを防ぐことが可能となります。
サポート品質の高いサービスを選定する
生体認証に限らず、認証システムにトラブルが発生した場合はシステムの利用ができない、扉の解錠を行えないなど、影響が大きくなりやすいと言えます。
そのような場合に、サービス側のサポートを利用することができればトラブル対応もスムーズに進めやすいと考えられます。
これらのポイントを抑えて生体認証を活用することで、その問題点を克服し、より安全に便利にサービスを利用することが可能になります。生体認証のメリットを享受しつつ、セキュリティも確保することが重要です。
生体認証の活用は、システムと運用双方の安全性を意識しよう
利便性セキュリティを大きく向上させ、効率化を図れる生体認証は非常に魅力的な仕組みです。
しかし、その効果を最大限に引き出すためには、その運用とシステムの安全性を両立させることが極めて重要と言えます。
高度なセキュリティ対策や運用知識が要求される現代のビジネス環境においては、自社だけでセキュリティ環境を構築するよりも専門性を持った事業者のサービスを利用する方が現実的な選択肢となるケースも多いでしょう。
生体認証の導入にはコストが必要ですが、導入によりどれだけの効率化やセキュリティの強化を見込めるのかを考慮し、コスト以上の成果を見いだせる形での導入を目指すことが大切です。
システムへのログインや入退室管理、来客対応の自動化など、幅広い業務に応用することが、費用対効果を高めるための重要な要素と言えます。
カメラで個人の顔を認証できる顔認証システムは応用力に長けた生体認証であり、自組織にマッチした使い方をすることで大きな成果を期待できるでしょう。