様々な場所で目にする自販機は、タッチパネル化やキャッシュレス対応など多くの改善が行なわれています。
その中で、顔認証システムに対応した自販機があることをご存じでしょうか。
現金が不要であることはもちろん、ICカードやスマートフォンを取り出すことなく商品を購入できる顔認証は、スピーディな買い物を実現することができ、自販機と相性が良いと考えられます。
この記事では、顔認証システムに対応した自販機の解説や、メリット・デメリットについて紹介します。
顔認証搭載の自販機とはどのようなもの?
自販機が顔認証機能を持つことで、従来の自販機からどのような点が変わるのでしょうか。
顔認証決済の仕組み
顔認証自販機で大きく変わるポイントは決済方式です。
現金やICカードなどは用いず、買い物客の顔情報とそれに紐付く決済情報により、決済が行なわれる仕組みです。
そのため、利用者は事前に顔情報と決済情報の登録を行なう必要があります。
顔認証自販機で買い物をする流れ
1.顔情報を登録
顔認証を利用するためには、自販機または関連アプリケーションで顔情報を登録する必要があります。この作業は初回のみ必要で、同一のシステムであれば2回目以降は不要です。
2.自販機で顔認証
自販機の前に立ち、カメラに顔を向けます。
スマートフォンなどのロック解除のように、短時間で認証することが可能です。
3.商品の選択
販売されている商品を選択します。タッチ操作やボタンを使用して、希望の商品を選びます。
4.決済
商品選択後、顔情報に紐付けられた決済情報を利用して、決済が行われます。
顔認証機能を搭載した自販機は、購入体験の大幅な進化をもたらすと考えられるのではないでしょうか。
顔認証自販機のメリット
顔認証により、具体的にどのようなメリットがあるのかを紹介します。
手ぶら決済
従来の自販機での購入には現金やICカード、スマートフォンなどが必要です。
顔認証を利用することで、事前に登録した情報をもとに瞬時に決済が完了します。
財布やカードを持たずに買い物ができることで、手間の削減に繋がります。
購入履歴の管理
顔認証自販機を使用すると、ユーザーの購入履歴を記録することができます。
これにより、ユーザーは自分が過去にどの商品を購入したのかを一目で確認することができるとともに、健康管理や家計簿などでの利用も考えられるでしょう。
また、自販機を設置する販売側も、どのようなお客様が商品を購入したのかデータとして知ることができ、売れ筋の傾向把握や分析に役立ちます。
給与からの天引き
企業の施設内での設置を想定した顔認証自販機では、給与から直接商品代金を天引きするシステムも存在します。
これにより、従業員は手間なく商品を購入でき、企業側としても管理が容易になります。
商品のレコメンド
ユーザーの購入履歴や嗜好を元に、おすすめの商品を提示することも可能です。
新商品のプロモーションや売上アップが期待でき、買い物客も自分に合わせたレコメンドを受けることで新しい商品を発見できる可能性が高まるでしょう。
顔認証技術の導入により、自販機はただの商品販売機から、ユーザーエクスペリエンスを飛躍的に向上させるツールへと進化しています。手ぶら決済や購入履歴の管理など、様々な機能が追加されることで、今後の自販機市場のさらなる拡大が期待されます。
顔認証自販機の注意点
多くのメリットを期待できる顔認証自販機ですが、注意したいポイントも存在します。
顔情報の厳重な管理
顔認証自販機はユーザーの顔情報をデータベースに保存しますが、この情報が漏洩した場合は重大なセキュリティインシデントになる可能性が高いと言えます。
漏洩してしまった人物本人にも多大な悪影響が及ぶ恐れもあるため、厳重な管理が求められるでしょう。
利用者が安心して顔認証自販機を使えるよう、企業としてどのような情報管理を行なっているのか、生体情報の利用範囲はどのように定めているのかを明確にすることが大切です。
利用開始前の登録作業
顔認証自販機を利用するには、事前に顔情報の登録が必要です。
初回利用時にはこの登録作業が求められるため、煩雑と感じる利用者もいるでしょう。
できるだけ事前登録作業を簡易にし、手順に迷うことがないように工夫することが重要です。
また、登録作業中に不具合やトラブルが起こった場合のサポート体制も用意しておくとよいでしょう。
利用方法の周知
顔認証を採用した自販機は新しい技術であり、全ての人がその利用方法を理解しているわけではありません。
利用方法に疑問があると、顔認証自販機の利用自体が面倒なものであると受け取られてしまう恐れもあります。
多くの方が迷わずスムーズな買い物をするためには、使い方を分かりやすく周知する必要があります。
顔認証自販機は便利で進化した新技術でありながら、情報管理の重要性や利用方法の周知など、新しい課題も伴います。
これらの注意点をしっかりと理解し、安全に利用することで、その真価を最大限に引き出すことができるでしょう。
顔認証自販機の導入事例
顔認証自販機は、既に導入が進んでいます。
ここでは実際の導入事例を紹介します。
商品のレコメンドをする自販機の実証実験
都内の主要駅では、顔認証及びAI機能を搭載した自販機を設置しました。
購入者の顔を認識することで非接触の決済が行えるだけではなく、認識した顔と購入者が画面上で選択する「今の気分」によりマッチしたドリンクをおすすめします。
音楽や動画などのAIによるおすすめは一般的に普及していますが、ドリンクのレコメンドも今後発展していくのかもしれません。
私物の持ち歩きがシビアな環境に設置
国内で稼働している薬品工場では、異物混入を防ぐために勤務中に私物の持ち歩きを制限しています。
これまで、就業中に自販機を利用する際は、別の区画に置いてある財布やスマートフォンを取りに戻っていたようです。
顔認証自販機であれば現金やキャッシュレス決済に必要なデバイスを持ち歩くことなく購入を完了できるため、従業員の不便が解消されています。
学校への導入
国内の全寮制の学校では、生徒達が親元を離れて集団生活をしています。
学校内でのトラブルを防止するために現金の所持は制限されており、これまで生徒達はICカードで買い物をしていました。
しかし、チャージの手間やカード自体の紛失など、課題が無いわけではありません。
そこで、カードすら不要で手ぶら決済ができる顔認証自販機を導入しました。
トラブル防止や利便性の向上だけではなく、生徒が商品を購入したタイミングで登録されているメールアドレスに通知が行なわれる仕組みで運用されており、保護者が子供の行動を知ることができる点も魅力です。
今後はさらに顔認証自販機の導入が拡大されることを期待できます。
今後の主流となることも期待される顔認証自販機
様々な場所で手軽に商品を購入できる自販機は、顔認証技術によりさらに便利なものへ進化しています。
特に、前述のような特定のニーズがある環境に対して、柔軟な課題解決が行えることも大きなメリットと言えるでしょう。
もちろん、一般的な駅構内や街中であっても顔認証自販機の利便性は効果を発揮します。
スマートフォンやICカードを利用しないキャッシュレス決済は、手荷物が多いシーンや複数個の商品を購入する際の手間を大きく削減できるでしょう。